心臓震盪は胸部に衝撃が加わったことにより心臓が停止してしまう状態です。
多くはスポーツ中に、健康な子供や若い人の胸部に比較的弱い衝撃が加わることにより起こるのですが、あまりよく知られていません。 |
- 比較的弱い衝撃:胸骨や肋骨が折れるとか、心臓の筋肉が損傷するような強い衝撃ではありません。子供が投げた野球のボールが当たる程度の衝撃で起こります。心臓の真上あたりが危険な部位です。
|
心臓震盪は衝撃の力によって心臓が停止するのではなく、心臓の動きの中で、あるタイミングで衝撃が加わったときに、致死的不整脈が発生することが原因と考えられています。 |
- あるタイミング:心臓の収縮のための筋肉の興奮が終わり始める時で、心電図上でT波の頂上から15-30msec(ミリ秒:15-30/1000秒)前のタイミングです。
- 致死的不整脈:心室細動といって、心臓の筋肉が痙攣している状態となり、心臓は収縮できず血液を送り出せません。つまり心臓が停止している状態です。
|
アメリカでは2002年に128例の心臓震盪症例のデータが集積されましたが、多くは18歳以下に起こっています。子供は胸郭が軟らかく、衝撃が心臓に伝わりやすいからです。野球やソフトボール、アイスホッケー、ラクロスなどの球技や、アメリカンフットボール、サッカーなどコンタクトスポーツにおいて発症していますが、日常の遊びのなかでも起こり得ます。ドッヂボールやサッカーボールの胸でのトラップなど大きく柔らかいボールでは発症しないようです。日本では報告もほとんどなく、実態を把握できていません。
私たちが知り得た日本国内の症例は12例(2005年5月31日現在)で、野球のボールが当たり発症したのが7例、ソフトボール(革製)が1例、拳が1例、手掌が1例、肘が1例、バットが1例です。10例が17歳以下の子供に発症しています。この中に、心臓マッサージと早期除細動処置により心拍が再開し、社会復帰した人が二人います。また、1例は心室細動ではなく、完全房室ブロック(脈が遅くなる不整脈)でした。 |
- 胸郭:胸の中央にある縦長の胸骨や肋骨などで、発育過程の子供は軟らかくたわみやすいので、衝撃が心臓に達しやすいと考えられます。
|