心臓震とうの事をもっと知ろう!
(輿水代表幹事講演資料より抜粋)
☆心臓の突然死
日本における突然死 約8万人(年間)このうち心臓に原因があるもの 60%
心室細動(心臓が停止する不整脈) → 70〜80%
年間 3万数千人が心室細動で死亡
交通事故死の5倍
☆若年者の突然死
若年者の心臓突然停止による死亡は
・肥大型心筋症
・冠動脈奇形
・左室肥大
・QT延長症候群
これらを基礎疾患として持つ人のスポーツ中に多くみられる
☆子どものスポーツ中の突然死
心臓病がない健康な子供が、胸に比較的軽い衝撃を受けた直後に突然虚脱状態となり、
死亡する事例が報告された。(1990年代 北米)
なぜ死亡するのか?
Commotio Cordis
コモーショ・コーディス
あるいは コモシオ・コルディス
Commotio :震盪(震とう、振盪、しんとう) Cordis :心臓
心臓震盪
どの位心臓震盪が起きているのか?
若年者のスポーツ中の突然死の原因(35歳以下、387例)(アメリカ)
肥大型心筋症 26.4%
心臓震盪 19.9%
冠動脈奇形 13.7%
左室肥大 7.5% Maron B.J. N. Engl. J. Med. 349,2003
日本のスポーツ関係の突然死に関する全国調査(1984〜1988)
40歳未満の若年者の死亡数 332例 → 66.4人/年
約20%が心臓震盪だとすると→ 心臓震盪による死亡数 約13人/年
☆心臓震盪について
1.研究の始まり
1990年代、北米で心臓病がない健康な子供が、野球のボールが当たるなど胸に比較的軽い衝撃を受けた直後に、突然虚脱状態となり死亡する事例がcommotio
cordisとして報告された。
2.北米スポーツ医学のトピックス
・スポーツ中に既存の心疾患を有さない若年者において、前胸部に鈍的外力が加えられた直後に発症した突然死、この際心臓胸壁の構造的損傷はない。
Maron,B.J.ら 1995年
・胸部への非穿通性の外力が加わった時に、心疾患がなく、胸壁や心臓に構造的損傷がなくても心停止に至った事例。 Maron,B.J.ら
1999年
・前胸部への非穿通性のインパルス様の衝撃が加わった時に不整脈を生じた事例。最重症は心停止(心室細動)であった。 Alex,D.N.ら 2001年
3.心臓震盪に関する動き
3-1.1990年代の北米スポーツ医学のトピックス
3-22.予防と応急処置への警鐘
3-3.症例の抽出
3-4.登録システムの設立 the US Commotio Cordis Registry
3-5.安全性に対する研究 ボールの材質、胸部プロテクター
4.診断基準
4-1.心停止の直前に前胸部に非穿通性の衝撃を受けていること
4-2.発生の状況が詳細に判明していること
4-3.胸骨、肋骨、心臓に構造的損傷がなかったこと
4-4.心血管系に既存の病気がないこと→ 128例の心臓震盪に関するデータ Maron,B.J.ら 2002年
5.胸部への衝撃手段128例の内訳 → 5-1図参照(リンク設定あり)
6.発症年齢 → 6-1図参照(リンク設定あり)
7.胸部への衝撃部位 → 7-1図参照(リンク設定あり)
8.国内の症例 → 心臓震盪症例集を参照(リンク設定あり)
手段 |
症例数 |
野球のボール(硬式) |
8例 |
野球のボール(軟式) |
2例 |
ソフトボール |
3例 |
サッカーボール(キーパー) |
2例 |
バスケットボール |
1例 |
タックル(アメフト) |
1例 |
金属バット(ソフトボール) |
1例 |
拳(少林寺拳法) |
1例 |
その他 |
4例 |
9.国内の発症年齢
年齢層 |
症例数 |
4歳〜6歳 |
2例 |
7歳〜9歳 |
0例 |
10歳〜12歳 |
4例 |
13歳〜15歳 |
11例 |
16歳〜18歳 |
2例 |
19歳〜20歳 |
1例 |
21歳以上 |
3例 |
10.心臓震盪の病態
胸部への鈍的外力により心室細動を生じることが本態と考えられる。
心室細動発生について
@鈍的外力が心電図上T波の頂点の15~30msec前に加わることが必要
A鈍的外力となるボールは硬い方が発生しやすい
B心臓の直上にある胸壁に打撃が加わると発生しやすい
C胸郭の形成途上にある子供に発生しやすい
(Linkらの実験 N.Engl.J.Med. J.Am.Coll.Cardiol.)
☆心臓震盪とは?
1.胸の骨が折れる、心臓の筋肉が損傷するという外傷ではなく、比較的弱い衝撃が胸に加わった事により生ずる心臓突然死である。
2.野球のボールが当たるなどによって起こる事が多く、今まで元気だった子供に起こる。
3.心臓に衝撃が加わったために不整脈が生じ、それは心室細動である。
4.心室細動はつまり心臓停止であり放置すれば死亡してしまう。
☆心室細動とは?
心臓の筋肉がバラバラに収縮して震えている状態
→ 心臓はポンプの働きができない
→ 血液を送り出すことができない
→ 心臓停止
しかし、適切な処置が行われれば社会復帰率は高い
☆目の前で突然人が倒れたらどうする?
声をかける?
救急車を呼ぶ?
見ぬ振りして立ち去る?
→ 心臓が止まっていたら緊急!
☆救急車で病院へ行けばOKなのか?
何もしないで救急車を待っていては助からないのです。
突然心臓が止まったら→ 3分以内に助けが必要です。
5分以上続くと脳障害が発生
10分以上続くと救命は困難
☆病院では救えない命
突然心臓が止まってしまった人は,急いで病院に搬送しても助けることは難しい
救急車で病院に搬送しても10分くらいかかる
☆どうしたらいいの?
その場にいる人が助け合えば救える命が有ります。
☆救命のためには?何をすべきか?
1.心肺停止者の社会復帰への条件
1-1.目撃者がいること
1-2.bystander CPRが実施されること
1-3.早期除細動が実施されること
★スポーツ中の心肺停止例では、上記の3条件を満たすことは可能
☆心臓震盪救命症例(国内)心停止22例
心拍再開例 |
10例/22例 |
社会復帰 |
8例 |
低酸素による脳障害 |
1例 |
死亡 |
1例 |
除細動実施確認数 |
10例/22例 |
現場で心拍再開 |
6例/10例 |
社会復帰 |
社会復帰 |
脳障害 |
1例 |
病院で心拍再開 |
3例/10例 |
社会復帰 |
2例 |
死亡 |
1例 |
心拍再開せず死亡 |
1例 |
☆心臓震盪の国内救命例(9例)
救命のポイントは,下記です。
1.目撃者がいた。
2.Bystander CPR が実施されていた。
3.現場での心電図は心室細動であった。
4.早期除細動が実施された。
5.1例は胸骨圧迫心臓マッサージのみで救命された。
学校設置のAEDを使用した早期除細動による完全社会復帰例
2007年4月 大阪岸和田市
その他の事例は救命事例集を参照してください。(リンク設定あり)
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