公園で遊んでいるうちに、それたキャッチボールの軟球が胸に当たって死亡した宮城県大河原町の小学5年男児=当時(10)=の父(35)ら両親が、球を投げた側の小学男児2人の親計4人に6250万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁の田村幸一裁判官は17日、死因について胸部に弱い衝撃を受けて起きる「心臓振とう」と認定した上で、事故の予見可能性を指摘して計6070万円の支払いを相手の親に命じた。
心臓振とうは、特定のタイミングで胸壁に衝撃が加わると心筋がけいれんし、血液を送り出せなくなり、死につながることもある。胸壁が軟らかく衝撃が心臓に伝わりやすい子供に症例が多いが、医学的に未解明の部分があり、「原因不明の突然死」とされてきた。
判決は、心臓振とうを研究する戸田中央総合病院(埼玉県)の輿水健治救急部長らの意見書や解剖鑑定書などを踏まえ、「男児が球を胸に受け、心臓振とうを引き起こして死亡したと認定できる」と判断した。
その上で「球を投げた男児らは、危険な場所でのキャッチボールを避ける注意義務があった。投げたのが小学生とはいえ、人の死を招くこともあり得ることは一般人なら十分に予測できる」と予見可能性を認めた。
判決によると、小五男児は2002年4月、町内の公園で遊んでいたところ、そばでキャッチボールをしていた男児の投げた球を胸に受けて倒れ、約4時間後に死亡した。
心臓振とうは、国内で正確な症例数は把握されていないものの、類似事例は相次いでおり、宮城県や仙台市が新年度予算案に、心筋の動きを整える「除細動器」を学校やスポーツ施設に配備する事業費を計上するなど対策を始めた。
原告の両親は「息子がなぜ死んだのか、真実を知りたかった。突然死の原因として心臓振とうが一般に知れ渡り、救える命があることに期待したい」と話した。代理人も「公園管理や園内での遊び方にも波及する意義ある判決だ」と評価した。
被告側は、球が男児の胸に当たったことを否定し、「仮に当たったとしても、死因は不明で、肺の炎症や熱射病などの可能性もある」と反論していた。
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