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Commotio :震盪(震とう、振盪、しんとう)
Cordis :心臓
心臓病がない健康な子供が、胸に比較的軽い衝撃を受けた直後に、突然虚脱状態となり死亡する事例が報告された。
Sudden death from cardiac arrest in a young person may occur during sports play after a blunt blow to the chest in the absence of structural cardiovascular disease or traumatic injury(cardiac concussion or commotio cordis).
Maron,B.J. et al. N.Engl.J.Med.Vol.333.337-342,1995
instantaneous cardiac arrest[that]is produced by non-penetrating chest blows in the absence of heart disease or identifiable morphologic injury to the chest wall or heart
Maron,B.J. et al. J.Cardiovasc. Electrophysiol. Vol.10.114-120,1999
Commotio cordis:mechanical stimulation of the heart by non-penetrating, impulse-like impact to the precordium that, through intrinsic cardiac mechanisms, gives rise to disturbances of cardiac rhythm of varying type, duration, and severity, including sudden cardiac death, in the absence of structural damage that would explain any observed effects.
Alex, D.N. et al. Lancet Vol.357.1195-1197, 2001
スポーツ中の若年者において、既存の心疾患を有さない場合に、前胸部に鈍的外力が加えられた 直後に発症する突然死、この際心臓胸壁の構造的損傷はない。
胸部への非穿通性の外力が加わった時に、心疾患がなくまた、胸壁や心臓に構造的損傷がなくても心停止に至る病態。
前胸部への非穿通性のインパルス様の衝撃が加わった時に生じるあらゆる不整脈としている。最重症は心停止となる。
a witnessed event of a blunt, nonpenetrating blow
to the chest immediately preceded cardiovascular collapse
detailed documentation of the circumstances from available newspaper articles,police reports, and telephone interviews with family members or other witnesses
absence of structural damage to the sternum, ribs, and heart itself
absence of any underlying cardiovascular abnormalities
心停止の直前に前胸部に非穿通性の衝撃を受けていること
発生の状況が詳細に判明していること
胸骨、肋骨、心臓に構造的損傷がなかったこと
心血管系に既存の病気がないこと
128例
少年野球チームの練習中10歳男児の胸にチームメートが投げた硬式ボールが当たり死亡した。
(1997年)
野球シニアリトルリーグの練習中13歳男児の胸にノックの硬式ボールがバウンドした後に当たり死亡した。
(2000年)
ドッジボールをしていた5歳女児の胸に13歳少年が投げた軟式ボールが当たり死亡した。
(2002年)
14歳男児が兄に胸を手で突かれ虚脱し死亡した。
治療を担当した救急医は心臓震盪が死因と判断した。
(2002年)
公園で遊んでいた10歳男児の胸に9歳少年が投げた軟式ボールが当たり死亡した。
(2002年)
高校野球の練習試合で15歳投手が打球(硬式ボール)を左胸に受け死亡した。死因は胸部打撲による心室頻拍とみられている。
(2004年8月)
高校野球練習中17歳選手がバンド練習時に投球(硬式ボール)を胸に受け死亡した。死因はボールが当たったことによる不整脈と見られている。
(2004年8月)
野球の試合中14歳男児が守備で2バウンドした打球(硬式ボール)を胸に受け死亡した。発症直後の心電図は心室細動であった。
(2004年8月)
ソフトボール練習中(遊び)小学5年生(10歳)が振った金属バットが、後ろにいた小学1年生(6歳)男児の胸にあたり倒れた。心肺停止状態で病院へ搬送され死亡した。心臓震盪と診断された。
(2005年5月)
15歳男性、少林寺拳法の練習中、胸部へ打撃を受けた後心停止となった。Bystander CPRが実施され、救急隊による除細動により心拍再開した。後遺症なく退院し社会復帰した。
19歳女性、両親の夫婦喧嘩を止めようとした際、母親の肘が胸部に当たり直後に心停止に至った。 父親がBystander CPRを実施、救急隊の除細動により心拍再開した。社会復帰した。
27歳女性、ソフトボールのトスバッティングの打球(革製ボール)を約2mの距離で胸骨上部に受け、四肢の虚脱感を自覚した。直後の心電図では一過性に完全房室ブロックを認めた。胸部に加えられた衝撃により誘発された不整脈であり、広義での心臓震盪と言える。
目撃者がいた。
Bystander CPR が実施されていた。
現場での心電図は心室細動であった。
救急隊により早期除細動が実施された。
1.Maron,B.J. et al. N.Engl.J.Med.vol.333,1995
2例/25例 心拍再開(2例も脳障害で死亡)
19例/25例(76%)で3分以内のCPR
2. Maron,B.J. et al. JAMA vol.287,2002
21例/128例 1年以上生存 (15例が完全社会復帰)
68例/128例(53%) 3分以内のCPR → 17例
38例/128例(30%) 3分以降のCPR → 1例
不明 → 1例
自然回復 → 2例
41例/128例 除細動実施(AED2例)
心室細動発生について
鈍的外力が心電図上T波の頂点の15~30msec前に加わることが必要
鈍的外力となるボールは硬い方が発生しやすい
心臓の直上にある胸壁に打撃が加わると発生しやすい
胸郭の形成途上にある子供に発生しやすい
胸の骨が折れる、心臓の筋肉が損傷するという外傷ではなく、比較的弱い衝撃が胸に加わった事により生ずる心臓突然死である。
野球のボールが当たるなどによって起こる事が多く、今まで元気だった子供に生じる。
心臓に衝撃が加わったために不整脈が生じると考えられており、最も重症なのが心室細動である。
心室細動はつまり心停止であり放置すれば死亡してしまう。
40歳未満の若年者の死亡数 332例 → 66.4人/年
約20%が心臓震盪だとすると
→ 心臓震盪による死亡数 約13人/年
応急手当のみで終了する場合
応急手当をした後病院へ搬送する場合
現場で救命のための処置(手当)を実施すべき場合
1.
心臓マッサージ
気道確保
人工呼吸
除細動が1分遅れると治療成功率は7〜10%減少 119番通報から救急車到着まで6分前後かかる 心停止が数分続くと脳機能の回復は難しい
現場での処置が社会復帰への道現場でしか助けることができない命
目撃者がいること
bystander CPRが実施されること
早期除細動が実施されること
心臓震盪は健康な子供におこる
2.心臓震盪は軽い衝撃でもおこる
3.心臓震盪を理解して予防しよう
4.発症したらまずAEDの手配をしよう
5.Bystander CPRを実施しよう
6.AEDがいつでも使える環境を作ろう