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子供達の環境改善のテーマ
発寒第一ハンターズ 助監督 菊地 繁治
新聞情報により心臓震盪を知る。
関連情報の入手(インターネット)
『心臓震盪から子供を救う会』他、心臓震盪関連情報をインターネットを利用して入手。
対策と迷い
野球関係の事故が多い為、父母への情報開示に迷いが有ったが全て知りえた情報を開示する事にした。野球を教える側と子供をチームに預ける側の相互理解が無いとAEDの実際運用は不可能と判断、父母の理解を求める事から始める。
迷った訳
野球の事故事例を父母に開示するという事は、野球が危険なスポーツと言っているのと同じ事に成ります。こうした情報を開示する事で退部する部員が出ないだろうか?そうした不安が有りました。
少なくとも開示した情報は、野球をする上で不利な情報ばかりです。
また指導する側の私達も『ボールを体の正面で取りなさい』と言っていますので指導方法も見直しする必要が有ります。どちらにしてもチーム運営者の立場は複雑に成る一方です。決断した訳
私は、心臓震盪の痛みは実感していません。しかし輿水代表幹事や岩田事務局長の声を聞く耳は持っています。何回もHPを読み返すうちにこの方々は決して野球が嫌いな訳では無い。むしろ野球というスポーツを振興させたいから安全性を考えて私達の為に提言して下さっている。
やらなきゃ駄目なのです。現場に直接居る大人が・・・
心臓震盪とはどのような状態か?
心臓震盪の事例は?
心臓震盪の対策を考える。
AEDの必要性とは?
指導方法を見直す。
子供への安全教育を考える。
子供に必要な環境作り。
北海道の冬は長く冬季練習は、小学校の体育館開放を利用していますがその練習中に下記の事が有りました。
小学2年生の子がダッシュ練習中に顔が真っ赤に成っていたので少し休むように言い椅子に座らせた時、胸を抑えて『うー』と叫びました。直ぐに寝かせ気道を確保できるように顎を上げた状態にして様子を見て保護者に連絡し迎えに来るように伝えました。保護者には、心臓の持病が無いか確認した所、気管支が余り良くない事を知らされました。
後1回走らせていたらどうなっただろう?
その後、状態が落ち着いたので軽めの練習参加をさせましたが、この事も心臓震盪に着目した大きな要因の一つです。大事に成らなくて良かった。この日は眠れない夜に成りました。
自分の息子がこうした悲しい事故に有ったらどうなるか?恐らく自分を取り乱し狂乱状態に成ると思います。
では心臓震盪に成る可能性がどの程度有るか?風邪のように発症頻度は高くは無いと思います。問題は、死に直結するという事です。
息子が通う中学野球部にはAEDは有りません。
親としてAEDが無い中での野球活動は不安が有ります。そうした不安はハンターズの親にも言える事だと思います。指導者から野球の死亡事故の資料を見せられた時、野球を辞めさせようと考えた父母も居ると思います。
野球を取り巻く環境が悪い中、野球活動を盛んにするには現場の安全対策が一番必要な事です。私が一父母なら指導者に対し『心臓震盪の事やAEDの事を考えて下さい。』と言うと思います。
私は、野球経験者では有りません。次男の息子がハンターズで野球を教わり息子と二人三脚で朝練習を毎日行いました。本やインターネットで野球の事を勉強して親子で同じ目的を持ち頑張りました。
素人の私は、ノックも余り打てない。力の加減も判らない。そんな中、監督からキャッチャー用プロテクターを全部付けてやりなさいという指導を頂きました。
防具をちゃんと付けた状態なら素人でも安心してノックが打て、子供も安心してボールを拾いに行くように成りました。
防具の必要性は、怪我への対処と子供の気持ちの対処という二面性が有ります。『当たっても痛くない』その結果ボールを正面で捕球する事が出来るように成りました。
反面、『ボールが当たった時の痛み』を知らないと上手に成れないという面も有ります。
優先順位は、胸部プロテクターの方が先決問題です。心臓震盪を起さないようにする事が第一のプロセスです。
危険予知活動として心臓震盪を考えると『胸にボールを当てて止めれば心臓震盪に成る可能性がある。だから防具を着用してAEDを備え心臓震盪に対処するようにする。』に成る訳です。
死因が心臓震盪で有れば結果から防御策を見出す事は簡単です。私が知る限りでは胸部プロテクターを着用する事に抵抗感を示す野球指導者の方が多いと思います。そんな物を付けて野球に成るか?という意見です。そうした意見を否定も肯定もしませんが、危険予知活動はスポーツをする上でも必要だと思います。
私達のように建設関係の仕事に従事している者は、現場の安全管理を行う必要が有ります。それは、工事の進捗状況に応じて毎日変化する内容です。『今日は、こうした作業が有るのでこうした事故が起きる可能性が有る』その事を従事者全員で話し合い事故が起きない様な対策をする事で労働災害事故を防ぐ努力をしています。
子供の危ない行為を見た時に注意したり叱ったりする事も必要ですが、危ない行為をさせないような指導をする方がより良いと思います。
『このような事をすればこうした事に成るかも知れない。だからこうした事はやってはいけない事』と子供が納得できる説明をする必要が有ります。
しかし現実には何度言っても同じ事を繰り返すイタチゴッコです。
そこで大人が諦めては試合に負けた時と同じ事に成ります。
根気良く子供と向き合う事が必要だと思います。
・チームでの安全教育
1.練習前のミーティングで怪我をしない目標を立てる
2.キャッチボールをして良い場所・悪い場所
3.素振りをして良い場所・悪い場所
4.素振りをしている人には近寄らない
5.バットの使い方を間違えると人を殺す道具にもなる
禁則事項は、練習の度に何度でも繰り返し注意し父母に対しては配布文書で注意を促す。 ・家庭での安全教育
1.チーム活動で注意された事を家庭で話し合う。
2.公園でキャッチボールをしている子にも教えてあげる。
3.命の大切さを話し合う。
死亡事故が起こる可能性が少しでも有る事を認知した上で何も対策を取らない状態で『ボールを正面で取れ』『胸に当てて取れ』という指導方法は、間違っていると思います。指導責任や過失責任が問われても仕方有りません。では、守っている選手が全員キャッチャー用の防具を付ければ良いか?それでは野球に成りません。
現在のように無防備で子供に野球をさせる事が正しい事か?答えはNOです。上の写真は、アメリカで発売されている胸部プロテクターの例です。只、どのような防具を付けたらと言っても完全に回避出来る訳では有りません。国内販売されていない以上、自分達でどうにかしなくては成りません。右の写真がうちのチームで行っている対策ですが、万全では有りません。
効果も全く判りませんが、ボールの衝撃は和らげる事が出来ます。
下記の内容は、実際に当チームに所属しているSさんというお母さんに話を聞いた内容です。
『公園でのキャッチボールの新聞記事を読み自分の子供にも該当する内容として認識し、自分の子供も被害者・加害者にも成りうる可能性が有る事を認識する物の心臓震盪という言葉の認識は無く、AEDという物の存在も知らない状態でした。
指導者側からの事故事例の情報提供に対して感謝している。
AEDの必要性を理解し自発的に緊急時にAEDを利用しようという気持ちが生まれた。ただ身近な物では無いだけに日頃から手に触れたり見たりしていたい。その為にも2ヶ月に一度位は、勉強会を行ないたい。
また胸部プロテクターの必要性も感じる。AEDの導入は親として有難い事です。』
AEDに関して理解が有る父母でも最初は、言葉の理解から始めなくては成りませんでした。
最初から危機管理を持ちながら勉強会に参加される方は良いですが、必要性を認識出来ない方も居ます。
1.使うか使わないか判らない物
2.今まで大丈夫だったのでこれからも大丈夫
3.そこまで用意する必要が有るか
そうした意見が出るのも当然ですが、逆の発想をした場合どのように考えるか?幾つか議題を定義します。
議題1.心臓震盪が起きた場合、子供を救えますか?
議題2.心臓震盪で死亡した場合、指導者やチームを訴えますか?
議題3.心臓震盪が起きない指導を子供達に出来ますか?
議題4.消火のスプリンクラーは設置しても使用すると思いますか?
議題2を除いて殆どNoという答えが戻ってきます。火災だって起きるか起きないか判らないのに防災対策をします。AEDも同じ事です。
AEDの必要性や心臓震盪の事を理解してもその次ぎの行動が出来るかというと一父母としては難しい面が有ります。
野球チームの体質自体独裁的な部分が有ります。
1.監督が絶対権限を持っている事
2.指導者もボランティアなので無理難題は言えない事
3.自分の経験だけで判断する指導者が多い事
こうしたチームの体質自体がAEDの普及を阻止している原因の一部では無いかと感じます。しかし当チームの場合AEDの導入提案の一番良き理解者は、監督です。監督が真っ先に賛成してその結果、議題を父母に下ろしたので比較的スムーズに運ぶ事が出来ました。チームのトップの理解が最優先課題なのです。従って父母からでは無く指導者側から導入計画を立てる必要が有ると思います。当チームの菊池治監督も22年間指導者を務めていますが、新しい事にも対処する監督です。
私は、日本一の少年野球チームの監督だと感じています。
AEDを導入したら今度は、勉強会の資料作りです。全ての団員父母がAEDを使用できるようにしなければ成りません。
しかし勉強する事と実際に事故に直面した時に処置できるかどうか?冷静な行動が取れるかどうか?その点が一番の課題です。
子供が怪我をした場合に適切なケアが出来るか?応急処置や応急手当の事も考えなくては成りません。最初に簡単な事から始め徐々に一次救命処置が出来るようにステップを踏む必要が有ります。
何人の保護者が試合や練習中の怪我を想定しているでしょうか?恐らく試合に熱中してそんな事は考えていません。割り箸を持って試合に行くのは私だけかも知れません。突き指した時、ギブス代わりに使えるようにそこからもう一度見直ししなければ成りません。
AEDの有効利用としてチーム活動で使用しない時は、団員が通っている小学校へ無償提供したりチーム活動をしている時に付近住民(町内会)にも貸し出しする提案や消防署にAEDが有る事で緊急時に貸し出しする旨を伝えました。何れも回答は来ていません。
AEDの認知度の低さも有りますが、人命救助を出来る機械がそこに有る事を知っていれば何かの役に立つと思います。
しかしAEDが有っても身近で人命救助に役立ったという実績が無いと不必要な物で終わってしまいます。
AEDが稼動する機会を望んでいる方は誰も居ません。しかし、そこにAEDが有ってどのような場面で活用できるかを知って貰いたいのです。
左の写真は、AED勉強会の様子です。
指導者・保護者だけでなく子供達にも説明します。全員がAEDの事を理解しなければ成りません。
音声ガイダンスが流れる度に皆さん興味深々に成りました。
AEDを導入した事が、新聞報道されると賛否両論の意見が有りました。
『良い取り組み』『野球離れに繋がる』等の意見です。
私は、野球が好きで子供達を愛しています。もっと沢山の子供達に野球を楽しんで欲しいからAEDや胸部プロテクターが必要なのです。
安全に野球を楽しめる環境を作るのが大人の役割ですし、プロ野球では無いのですから防具や保護具を付けて野球をさせても良いと思います。それが邪道な考えなのでしょうか?
地域の野球連盟でAEDを用意しても指導者達・保護者達の自意識が無いと子供を救う事などできる筈が有りません。野球関係者の皆さんが一環と成って取組んで貰う事が必要です。特にプロ野球球団等の影響力の有る団体がAEDを導入した私達のような少人数のボランティアチームを応援してくれるような動きが出る事を望んでいます。